会議室のWi-Fiが頻繁に切断される

会議室でWi-Fiが頻繁に切断される問題について、電波干渉やチャネル重複などの原因調査から改善策までをひとり情シスの視点で実践的に解説します。

状況:会議室でWi-Fiが安定しない

「会議中にTeamsのビデオ通話が途切れる」「プレゼンの画面共有が止まる」「お客様がゲストWi-Fiに接続できない」――会議室のWi-Fi不安定は、ひとり情シスが受ける相談の中でも特に多いものの一つです。

リモートワークの普及に伴い、Web会議の利用頻度が急増しています。会議室でのWi-Fi品質は、社内外のコミュニケーションに直結するため、「つながるけど遅い」「たまに切れる」という中途半端な状態が最もストレスを生みます。

今回のケースでは、3つの会議室のうち特定の1室(会議室B)でのみWi-Fiが不安定になる問題を調査・解決した事例を解説します。

原因:Wi-Fiが不安定になる主な要因

Wi-Fiの不安定さには複数の原因が絡み合っていることが多く、今回の調査で以下の要因が複合的に影響していることが判明しました。

要因1:電子レンジとの電波干渉

会議室Bは給湯室の隣に位置しており、給湯室の電子レンジが2.4GHz帯の電磁波を発生させていました。Wi-Fiの2.4GHz帯と電子レンジの動作周波数は重なるため、電子レンジ使用中にWi-Fi通信が著しく劣化します。昼休みの時間帯に特に不安定になるという社員の報告と一致しました。

要因2:チャネル重複(同一チャネル干渉)

社内に設置された3台のアクセスポイント(AP)がすべて2.4GHz帯のチャネル6を使用していました。さらに、隣接するテナントのWi-Fiも同じチャネルを使用しており、電波が干渉し合っていました。

要因3:アクセスポイントの過負荷

会議室Bに最も近いAPに接続が集中しており、同時接続数が30台を超えることがありました。一般的な業務用APの推奨同時接続数は20~30台程度であり、限界に達していました。

💡 ポイント

Wi-Fiの問題は「見えない電波」が相手なので、原因特定が困難に感じがちです。しかし、「特定の場所で」「特定の時間帯に」不安定になるというパターンがあれば、電波干渉が原因である可能性が高いです。逆に「場所や時間に関係なく不安定」であれば、AP本体の故障やファームウェアの問題を疑いましょう。

対応手順:調査から改善まで

ステップ1:Wi-Fiアナライザーで電波状況を可視化する

まず、現在の電波状況を「見える化」します。Wi-Fiアナライザーアプリを使えば、どのチャネルにどのSSIDがどの程度の電波強度で存在しているかを視覚的に確認できます。

  • Android:WiFi Analyzer(無料)が定番。チャネルの使用状況がグラフで一目瞭然
  • Windows:Wi-Fi Analyzer(Microsoft Store、無料)またはinSSIDer
  • iPhone/iPad:OS制限により詳細な分析アプリは少ないが、AirMacユーティリティでスキャン可能

📋 具体例

WiFi Analyzerで会議室Bを調査した結果、2.4GHz帯のチャネル6に自社AP3台と隣接テナントのAP2台の計5つのSSIDが重なっていることが判明しました。電波強度グラフでは、チャネル6が山のように盛り上がり、チャネル1やチャネル11はほぼ空いている状態でした。2.4GHz帯で干渉なく使えるチャネルは1・6・11の3つだけなので、すべてが6に集中しているのは最悪の状態です。

ステップ2:5GHz帯への移行を検討する

2.4GHz帯は利用可能なチャネルが少なく、電子レンジやBluetoothなど他の機器との干渉も避けられません。一方、5GHz帯はチャネル数が多く、電子レンジの干渉も受けないため、オフィス環境では5GHz帯の利用が推奨されます。

ただし、5GHz帯は2.4GHz帯と比較して以下の特性があります。

  • 利点:チャネル数が多い(干渉が少ない)、高速通信が可能、電子レンジ等の干渉を受けない
  • 欠点:障害物(壁・パーティション)に弱い、電波到達距離が短い

⚠️ 注意

5GHz帯への移行を行う際、古い端末(Wi-Fi 4以前のノートPCやスマートフォン)が5GHz帯に対応しているか確認してください。2015年以前の端末には2.4GHz帯のみ対応のものがあります。また、5GHz帯の一部チャネル(DFS対象チャネル)は気象レーダーとの干渉を避けるため、レーダー検出時に自動的にチャネルが変更される場合があります。

ステップ3:チャネル設計を見直す

APのチャネル設定を「自動」から「手動」に変更し、計画的にチャネルを割り当てます。

2.4GHz帯のチャネル設計

  • AP1(1F事務所):チャネル1
  • AP2(2F会議室エリア):チャネル6
  • AP3(3F開発室):チャネル11

5GHz帯のチャネル設計

  • AP1:チャネル36
  • AP2:チャネル52
  • AP3:チャネル100

📋 具体例

多くの業務用APは管理画面(Web GUI)からチャネル設定を変更できます。ブラウザでAPのIPアドレスにアクセスし、ワイヤレス設定画面でチャネルを「自動」から手動に切り替えます。設定変更後、APの再起動が必要な場合があります。変更は業務時間外に行い、変更前の設定値を必ずスクリーンショットで記録しておきましょう。

ステップ4:APの配置と負荷分散を見直す

会議室エリアの同時接続数が多い場合、APを追加して負荷を分散させます。

  • 会議室Bの近くに専用のAPを1台追加設置
  • 5GHz帯専用のSSIDを作成し、会議室ではそちらに接続するよう案内
  • バンドステアリング機能(5GHz対応端末を自動的に5GHz帯に誘導)が使えるAPであれば有効にする

ステップ5:改善効果を測定する

チャネル変更やAP追加後、以下の方法で改善効果を確認します。

  1. 速度測定:fast.com や Speedtest.net で改善前後の速度を比較
  2. 安定性確認:Web会議を30分以上実施し、切断やカクつきがないか確認
  3. ユーザーフィードバック:実際に会議室を利用する社員に1週間程度使用してもらい、感想を収集

💡 ポイント

ひとり情シスの視点では、Wi-Fiの改善は「目に見える成果」が出やすく、社員からの評価につながりやすい仕事です。改善前後のスピードテスト結果をスクリーンショットで残しておくと、上司への報告や次年度の予算申請時に説得力が増します。「改善前:下り5Mbps → 改善後:下り150Mbps」のような数字は誰にでも分かりやすいです。

再発防止策

1. 定期的な電波状況チェック

半年に1回程度、Wi-Fiアナライザーで各フロアの電波状況を確認します。隣接テナントの入れ替わりや新たな電波源の追加により、状況は変化します。

2. APファームウェアの定期更新

APのファームウェアには不具合修正やパフォーマンス改善が含まれることがあります。四半期に1回程度、メーカーサイトで最新ファームウェアを確認し、適用しましょう。

3. ゲストWi-Fiの分離

来客用のWi-Fiは社内ネットワークとは別のSSID・VLANで運用し、帯域制限を設けることで、社内業務への影響を防ぎます。

⚠️ 注意

社員が個人のスマートフォンやポケットWi-Fiを社内で使用すると、予期しない電波干渉の原因になります。特に個人用ポケットWi-Fiは2.4GHz帯を使用することが多く、社内APと干渉する可能性があります。BYODポリシーで個人デバイスのWi-Fi利用ルールを明確にしておきましょう。

まとめ

  • Wi-Fiの不安定さは電波干渉・チャネル重複・AP過負荷が主な原因
  • Wi-Fiアナライザーで電波状況を可視化することが調査の第一歩
  • 2.4GHz帯から5GHz帯への移行が最も効果的な改善策
  • チャネル設計は「自動」任せにせず、手動で計画的に割り当て
  • 改善効果は数値で測定し、記録として残しておく