ルーティングの基礎
ルーティングとは
ルーティングとは、異なるネットワーク間でパケットを最適な経路で転送するプロセスです。ルーターやL3スイッチが持つ「ルーティングテーブル」に従って、宛先ネットワークへの経路を決定し、パケットを次のルーター(ネクストホップ)に転送します。
ルーティングテーブルの構造
ルーティングテーブルは「宛先ネットワーク」と「そこへ到達するための情報」の対応表です。
📋 具体例
Windowsでのルーティングテーブル確認:
route print
表示例:
宛先ネットワーク ネットマスク ゲートウェイ インターフェイス メトリック
0.0.0.0 0.0.0.0 192.168.1.1 192.168.1.100 25
192.168.1.0 255.255.255.0 On-link 192.168.1.100 281
192.168.2.0 255.255.255.0 192.168.1.254 192.168.1.100 26
スタティックルート(静的経路)
管理者が手動でルーティングテーブルにエントリを追加する方式です。設定がシンプルで動作が予測しやすいため、中小企業のネットワークでは最も一般的に使用されます。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 設定がシンプル | ネットワーク変更時に手動修正が必要 |
| ルーターの負荷が低い | 拠点数が多いと管理が煩雑 |
| 動作が予測可能 | 障害時の自動切替ができない |
| セキュリティが高い | スケーラビリティに欠ける |
📋 具体例
Yamaha RTXルーターでのスタティックルート設定:
ip route 192.168.2.0/24 gateway 10.0.0.2
ip route 192.168.3.0/24 gateway 10.0.0.3
Cisco ルーターでの設定:
ip route 192.168.2.0 255.255.255.0 10.0.0.2
ip route 192.168.3.0 255.255.255.0 10.0.0.3
Windows PCでの設定(管理者権限):
route add 192.168.2.0 mask 255.255.255.0 192.168.1.254 -p
※ -p は永続化オプション(再起動後も有効)
デフォルトルート
デフォルトルートは、ルーティングテーブルに具体的な宛先が見つからない場合に使用される「最終手段」の経路です。宛先を0.0.0.0/0として設定します。
ひとり情シスの視点:中小企業の拠点ルーターでは、社内宛のスタティックルートとインターネット向けのデフォルトルートの2種類があれば十分なケースがほとんどです。デフォルトルートのゲートウェイにはISPのルーター(上位ルーター)を指定します。
メトリックとアドミニストレイティブディスタンス
同じ宛先に複数の経路がある場合、ルーターはメトリック(経路のコスト)が最小の経路を選択します。
| 概念 | 説明 | 使われる場面 |
|---|---|---|
| メトリック | 経路のコスト(ホップ数、帯域幅など) | 同一プロトコル内での経路選択 |
| AD値 | ルーティングプロトコルの信頼度 | 異なるプロトコル間での経路選択 |
AD値(Administrative Distance)の代表的な値:
| 経路タイプ | AD値 |
|---|---|
| 直接接続 | 0 |
| スタティックルート | 1 |
| OSPF | 110 |
| RIP | 120 |
動的ルーティングの概要
動的ルーティングは、ルーター同士が自動的に経路情報を交換し、ルーティングテーブルを構築・更新する方式です。
| プロトコル | 分類 | 特徴 | 中小企業での適用 |
|---|---|---|---|
| RIP | ディスタンスベクター | 設定が簡単、ホップ数でメトリック計算 | 小規模で使用可能だが非推奨 |
| OSPF | リンクステート | 収束が高速、大規模対応 | 拠点間接続で使用される場合あり |
| BGP | パスベクター | ISP間のルーティング | 通常不要 |
ポイント:中小企業で動的ルーティングが必要になるのは、拠点数が5以上あるか、冗長経路がある場合です。2〜3拠点程度であれば、スタティックルートの方がシンプルでトラブルが少なく管理しやすいです。動的ルーティングを導入する場合はOSPFを選択しましょう。
デフォルトゲートウェイの冗長化(VRRP/HSRP)
デフォルトゲートウェイのルーターが故障すると全端末がインターネットに接続できなくなります。VRRP(Virtual Router Redundancy Protocol)やHSRP(Hot Standby Router Protocol)を使えば、仮想IPアドレスを2台のルーターで共有し、自動的にフェイルオーバーできます。
📋 具体例
VRRPの構成例:
・ルーターA(マスター):192.168.1.2(仮想IP: 192.168.1.1)
・ルーターB(バックアップ):192.168.1.3(仮想IP: 192.168.1.1)
・端末のデフォルトGW:192.168.1.1(仮想IP)
ルーターAが故障 → ルーターBが自動的に仮想IPを引き継ぎ
端末は設定変更不要でインターネット接続を継続
✅ 完了済み