🌐 ネットワーク構築・運用 第5章-1節

監視の仕組みと実装

なぜネットワーク監視が必要なのか

「ネットワークが遅い」「インターネットに繋がらない」といった障害は、ユーザーから報告される前に検知し、迅速に対応したいものです。ネットワーク監視は、障害の早期発見だけでなく、キャパシティ計画や予防保全にも役立ちます。

ひとり情シスの視点:ひとり情シスは常にネットワークを見張っているわけにはいきません。自動監視ツールを導入して「異常があれば通知が来る」仕組みを作ることで、少人数でも安定した運用が実現できます。

監視の種類

監視種類内容検知できること
死活監視(Ping監視)ICMP Pingで応答の有無を確認機器のダウン、ネットワーク断
ポート監視TCP接続でサービスポートの応答を確認サービス停止(Web、メール等)
SNMP監視SNMP GetでCPU使用率・メモリ等を取得リソース逼迫、パフォーマンス低下
トラフィック監視帯域使用量をリアルタイムで測定回線逼迫、異常トラフィック
ログ監視Syslogやイベントログを収集・分析セキュリティ異常、設定変更
URL監視HTTPリクエストで応答コードと応答時間を確認Webサイトのダウン・遅延

SNMP(Simple Network Management Protocol)

SNMPは、ネットワーク機器の情報を取得・設定するための標準プロトコルです。ほぼすべてのネットワーク機器(ルーター、スイッチ、AP、サーバー、UPSなど)がSNMPに対応しています。

SNMPの構成要素

要素説明
SNMPマネージャー監視サーバー。機器にリクエストを送り情報を収集
SNMPエージェント監視対象の機器。マネージャーのリクエストに応答
MIB(Management Information Base)監視項目のデータベース(OIDで識別)
コミュニティ文字列SNMPv1/v2cでの認証用パスワード
SNMPトラップエージェントが異常発生時にマネージャーへ自発的に通知

⚠️ 注意

SNMPv1/v2cはコミュニティ文字列が平文で流れるため、セキュリティリスクがあります。可能であれば暗号化と認証に対応したSNMPv3を使用してください。やむを得ずv2cを使う場合は、コミュニティ文字列を「public」のままにせず必ず変更し、SNMPトラフィックをACLで管理VLANに限定してください。

監視ツールの選定

ツールライセンス特徴中小企業での適性
ZabbixOSS(無料)高機能、柔軟な設定、日本語対応充実◎(コスト重視ならベスト)
PRTG Network Monitor有料(100センサー無料)GUI操作が簡単、自動検出機能○(手軽に始めたい場合)
LibreNMSOSS(無料)SNMP特化、自動検出○(NW機器中心の監視)
NagiosOSS(無料)歴史が長い、プラグインが豊富△(設定が複雑)
DatadogSaaS(有料)クラウド統合監視、ダッシュボード充実△(コストが高め)

ポイント:中小企業のひとり情シスにはZabbixが最もおすすめです。無料で使え、Ping監視からSNMP監視、Windowsのイベントログ監視まで幅広く対応します。仮想マシン1台(2vCPU/4GB RAM程度)で動作し、メールやTeams Webhookでアラート通知が可能です。

帯域監視

ネットワークの帯域使用状況を継続的に記録することで、回線増速の必要性やトラフィックの異常を把握できます。

  • SNMP帯域監視:スイッチやルーターのインターフェースのトラフィック量をSNMPで取得
  • NetFlow/sFlow:通信フローの詳細(送信元/宛先IP、プロトコル、帯域)を分析
  • ミラーポート:スイッチの特定ポートの通信を別ポートにコピーして分析

しきい値設定とアラート

監視が効果を発揮するのは、適切なしきい値(閾値)を設定して異常を検知できるようにすることです。

📋 具体例

推奨しきい値の例:
・Ping応答 → 3回連続タイムアウトで「障害」アラート
・CPU使用率 → 80%以上5分継続で「警告」、95%以上で「障害」
・メモリ使用率 → 85%以上で「警告」、95%以上で「障害」
・ディスク使用率 → 80%以上で「警告」、90%以上で「障害」
・インターフェース帯域 → 70%以上で「警告」
・Ping応答時間 → 100ms以上で「警告」、500ms以上で「障害」

ひとり情シスの視点:しきい値は厳しすぎると大量のアラートが発生して「オオカミ少年状態」になり、本当の障害を見逃す原因になります。最初は緩めに設定し、誤報の状況を見ながら段階的に調整していくのが現実的です。夜間・休日のアラートはメールだけでなく、スマートフォンのプッシュ通知(Teams/Slack連携)も活用しましょう。

監視ダッシュボードの構築

監視ツールのダッシュボードを構築して、ネットワークの状態を一目で把握できるようにしましょう。

  • ネットワーク構成図(マップ):機器の接続関係と稼働状態を可視化
  • トラフィックグラフ:主要回線の帯域使用量を時系列グラフで表示
  • アラート一覧:直近のアラートとその対応状況を表示
  • 稼働率レポート:月次でネットワーク稼働率を集計し、SLA管理に活用