🏗️ サーバー構築・運用 第2章-2節

グループポリシー(GPO)運用

グループポリシー(GPO)とは

グループポリシー(Group Policy Object:GPO)は、Active Directory環境でユーザーやコンピュータの設定を一元的に制御する仕組みです。数百台のPCに対して、一貫したセキュリティ設定やデスクトップ環境を適用できるため、ひとり情シスにとって最も強力な管理ツールのひとつです。

GPOの仕組み

GPOは以下の2つのコンポーネントで構成されます。

コンポーネント保存場所内容
GPC(Group Policy Container)Active Directory(LDAPデータベース)GPOの属性情報、リンク情報、ACL
GPT(Group Policy Template)SYSVOL共有(\\ドメイン\SYSVOL)実際のポリシー設定ファイル、スクリプト、ADMXテンプレート

クライアントPCは起動時とユーザーログオン時にGPOをダウンロードし、設定を適用します。その後も90〜120分間隔(ランダムなオフセットを含む)でバックグラウンド更新が行われます。

LSDOU適用順序

GPOは複数のレベルにリンクでき、以下の順序で適用されます。後から適用されたポリシーが優先されます。

順序レベル説明
1L: ローカルポリシー各PC固有の設定(gpedit.msc)。最初に適用され、最も優先度が低い
2S: サイトADサイトにリンクされたGPO。拠点単位の設定に使用
3D: ドメインドメインにリンクされたGPO。全社共通の設定(パスワードポリシーなど)
4OU(組織単位)OUにリンクされたGPO。部署・用途別の設定。最後に適用され、最も優先度が高い

ポイント:LSDOU(ローカル→サイト→ドメイン→OU)の順序を覚えておけば、GPOの競合時にどの設定が有効になるか予測できます。OUの階層が深い場合は、子OUのGPOが親OUのGPOより優先されます。

GPOの特殊な制御

制御方法説明使用場面
強制(Enforced)上位のGPOの設定を下位のOUで上書きさせない全社必須のセキュリティポリシーを例外なく適用したい場合
継承のブロック上位のGPO設定をそのOUに適用させないテスト用OUで本番ポリシーを除外したい場合
セキュリティフィルタリング特定のユーザー・グループ・コンピュータのみにGPOを適用同一OU内で一部のPCだけに設定を適用したい場合
WMIフィルタリングWMIクエリの条件に合致するPCのみにGPOを適用Windows 11のみ、ノートPCのみなどの条件付き適用

⚠️ 注意

「強制」と「継承のブロック」が競合した場合は、「強制」が勝ちます。つまり、親ドメインで「強制」を設定したGPOは、子OUで継承をブロックしても適用されます。この仕様を理解しておかないと、意図しないポリシー適用が発生します。

よく設定するGPO項目

パスワードポリシー

パスワードポリシーはドメインレベルのGPOでのみ有効です(Default Domain Policy推奨)。

設定項目推奨値設定パス
パスワードの最小長14文字以上コンピュータの構成 → ポリシー → Windowsの設定 → セキュリティの設定 → アカウントポリシー
パスワードの複雑さ有効同上
パスワードの有効期間0(無期限)または365日同上
アカウントロックアウトのしきい値5〜10回同上
ロックアウト期間30分同上

ポイント:NISTの最新ガイドライン(SP 800-63B)では、定期的なパスワード変更の強制は推奨されなくなりました。代わりに十分な長さ(14文字以上)と、漏洩検知時の即時変更を推奨しています。頻繁な変更強制はユーザーが単純なパスワードを使い回す原因になります。

デスクトップ・ブラウザ制御

  • 壁紙の統一:ユーザーの構成 → 管理用テンプレート → デスクトップ → デスクトップの壁紙
  • コントロールパネルの制限:ユーザーの構成 → 管理用テンプレート → コントロールパネル
  • USBストレージの無効化:コンピュータの構成 → 管理用テンプレート → システム → リムーバブル記憶域へのアクセス
  • Windows Update設定:コンピュータの構成 → 管理用テンプレート → Windowsコンポーネント → Windows Update
  • Edge/Chromeのポリシー:ADMXテンプレートを追加することで制御可能

ソフトウェア制限

  • AppLocker:実行可能なアプリケーションをホワイトリスト/ブラックリストで制御
  • ソフトウェアの制限のポリシー(SRP):AppLockerの前身。Windows Pro editionでも使用可能

ログオンスクリプト

GPOでログオン時・ログオフ時・起動時・シャットダウン時にスクリプトを実行できます。

📋 具体例

ネットワークドライブの自動マッピング(ログオンスクリプト例):
@echo off
net use Z: \\fileserver\share /persistent:no
net use Y: \\fileserver\department\%USERNAME% /persistent:no

※ 現在はGPOの「ドライブマッピング」(グループポリシー基本設定)を使う方法がスクリプトより推奨されます。ユーザーの構成 → 基本設定 → Windowsの設定 → ドライブマップ で設定できます。

GPOのトラブルシューティング

GPOが期待通りに適用されない場合の調査手順です。

コマンド説明使用例
gpresult /r現在適用されているGPOの概要を表示コマンドプロンプトで実行
gpresult /h report.html詳細なGPO適用結果をHTML形式で出力ブラウザで開いて詳細確認
gpupdate /forceGPOを即座に再適用設定変更後の即時反映に使用
rsop.mscポリシーの結果セット(RSoP)をGUIで確認どのGPOの設定が有効か視覚的に確認

GPOが適用されない主な原因は以下の通りです。

  • リンク先の間違い:GPOがユーザー/コンピュータが存在するOUにリンクされていない
  • セキュリティフィルタリング:対象オブジェクトにGPOの読み取り権限がない
  • WMIフィルタリング:WMIクエリが条件に合致しない
  • レプリケーション遅延:ドメインコントローラー間のレプリケーションが完了していない
  • SYSVOL同期の問題:GPTファイルが正しくレプリケートされていない

ひとり情シスの視点:GPOのトラブル対応で最も重要なのはgpresult /h report.htmlです。HTMLレポートには、適用されたGPO、拒否されたGPO、各設定項目の由来が明記されるため、問題の原因を効率的に特定できます。新しいGPOを作成したらまずテスト用OUで検証し、問題がないことを確認してから本番OUに適用しましょう。