クレーム対応の正しい方法と使えるフレーズ集
お客様の怒りを静め、信頼に変えるプロの対応術を具体的な会話例とともに解説します。
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クレーム対応の心構え:クレームは「贈り物」
クレーム対応に苦手意識を持つ人は多く、「怒られるのが怖い」「何を言えばいいかわからない」「自分のせいじゃないのに」と感じるのは自然なことです。
しかし、クレーム対応の専門家であるジャネル・バーロウとクラウス・メラーは、著書の中で「クレームは贈り物である」と述べています。なぜなら、不満を持った顧客のうち実際にクレームを伝えるのはわずか4%と言われており、残りの96%は黙って去っていくからです。
- 不満を持った顧客の96%はクレームを言わずに去る
- クレームを適切に処理すると、顧客の70%以上がリピーターになる
- 不満を持った顧客は平均9〜10人に悪い口コミを広げる
- クレーム処理に満足した顧客は平均5〜8人に良い口コミを広げる
つまりクレームは、顧客との信頼関係を強化する最大のチャンスなのです。
クレーム対応に必要な3つのマインド
- 「個人攻撃ではない」と理解する:お客様が怒っているのは状況に対してであり、あなた個人を攻撃しているわけではありません
- 「共感は同意ではない」と知る:お客様の気持ちに寄り添うことは、「こちらが悪い」と認めることではありません
- 「解決できる」と信じる:ほとんどのクレームには解決策があります。わからなければ上司や担当者に相談すればよいのです
クレーム対応は「闘い」ではなく「協力」。お客様と同じ側に立って、一緒に問題を解決する姿勢が、信頼を生む。
クレーム対応の基本5ステップ
クレーム対応には決まった「型」があります。この5ステップを身につければ、どんなクレームにも冷静に対応できます。
Step 1:まず謝罪する
お客様が不快な思いをしたこと自体に対して、まず謝罪します。原因や責任の所在に関わらず、「ご不便・ご迷惑をおかけした事実」に対して謝るのです。
- 「このたびはご不便をおかけし、大変申し訳ございません」
- 「ご迷惑をおかけしまして、誠に申し訳ございません」
- 「ご不快な思いをおかけしましたこと、心よりお詫び申し上げます」
※この段階では、まだ原因が不明でも構いません。「お客様が不快に感じている」という事実に対して謝罪するのです。
Step 2:傾聴する(話を聴く)
お客様の話を遮らず、最後まで聴くことが最も重要です。怒りの感情は、話すことで徐々に落ち着いていきます。心理学でいう「カタルシス効果」です。
傾聴のポイントは以下の通りです。
- 相づちを打つ:「はい」「さようでございますか」「おっしゃる通りです」
- メモを取る:事実を正確に記録する
- 途中で反論しない:言い分があっても、まず聴き切る
- 要約して確認する:「つまり○○ということでよろしいでしょうか」
Step 3:事実を確認する
お客様の話を聴いた後、事実関係を確認します。このとき「質問」ではなく「確認」の形で聞くのがポイントです。
NG:「本当にそうだったんですか?」(疑っている印象を与える)
OK:「確認させていただきたいのですが、○月○日にお買い上げいただいた商品が、△△の状態だったということでよろしいでしょうか」
事実確認の際は、5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように)を意識して、漏れなく確認しましょう。
Step 4:解決策を提示する
事実を確認したら、具体的な解決策を提示します。可能な場合は複数の選択肢を提示して、お客様に選んでもらうのが理想的です。
- 「以下の方法で対応させていただきたいのですが、いかがでしょうか」
- 「○○か△△のどちらかで対応させていただけますが、どちらがよろしいでしょうか」
- すぐに回答できない場合:「社内で確認の上、○日以内にご連絡いたします」
Step 5:感謝を伝える
対応の最後に、クレームを伝えてくれたことへの感謝を述べます。これにより、お客様は「言って良かった」と感じ、ネガティブな体験がポジティブな印象に変わります。
- 「このたびは貴重なご意見をいただき、ありがとうございました」
- 「お知らせいただいたおかげで、改善につなげることができます」
- 「今後はこのようなことがないよう、サービスの改善に努めてまいります」
ノーベル経済学賞を受賞した心理学者ダニエル・カーネマンが提唱した「ピーク・エンドの法則」によると、人は体験全体の平均ではなく、最も感情的だった瞬間(ピーク)と、最後の瞬間(エンド)で体験を評価します。つまり、クレームの「終わり方」が良ければ、トラブルがあったにもかかわらず全体の印象は良くなります。最後の感謝と丁寧な対応が、顧客満足を決定づけるのです。
場面別クレーム対応フレーズ集
よくあるクレーム場面別に、使えるフレーズをまとめました。
商品・サービスへの不満
| 場面 | 対応フレーズ |
|---|---|
| 商品の不良 | 「ご迷惑をおかけし申し訳ございません。すぐに代替品をお送りするか、返金のどちらかで対応させていただきます」 |
| サービスの質 | 「ご期待に沿えず大変申し訳ございません。具体的にどのような点がご不満でしたでしょうか」 |
| 納期遅延 | 「お届けが遅れまして大変申し訳ございません。現在の状況をお調べいたしますので、少々お時間をいただけますか」 |
| 価格への不満 | 「ご不明な点があり申し訳ございません。料金の内訳について、改めてご説明させていただいてよろしいでしょうか」 |
対応への不満
お客様:「さっきの店員の態度がひどかった。あんな対応ありえない」
対応:「大変失礼いたしました。不快な思いをされたこと、心よりお詫び申し上げます。差し支えなければ、どのような対応だったか詳しく教えていただけますか。該当スタッフへの指導と、再発防止に努めてまいります」
ポイント:同僚や部下を庇うのではなく、まずお客様の気持ちに寄り添い、改善を約束する。
お客様の怒りが激しい場合
- 「おっしゃる通りでございます。ご不満はもっともだと思います」
- 「大変申し訳ございません。お気持ちはよくわかります」
- 「私が同じ立場でしたら、同様に感じると思います」
- 「必ず責任を持って対応させていただきます」
絶対にやってはいけないNG対応
クレーム対応で最も危険なのは、良かれと思ってやったことが火に油を注ぐ結果になることです。以下のNG対応は絶対に避けましょう。
NG1:言い訳・責任転嫁
NG:「それは他の部署の担当なので、私にはわかりません」
OK:「担当部署に確認いたしますので、少々お待ちいただけますか」
NG:「規約にも書いてあるのですが…」
OK:「ご案内が不十分で申し訳ございません。改めてご説明させてください」
NG:「他のお客様からはそのようなご指摘はいただいておりません」
OK:「貴重なご意見ありがとうございます。改善を検討いたします」
NG2:お客様の話を遮る・否定する
お客様の発言を途中で遮ったり、「それは違います」「そんなはずはありません」と否定するのは厳禁です。たとえお客様の認識に誤りがあっても、まず話を最後まで聴いてから、事実を丁寧に説明しましょう。
NG3:たらい回しにする
「その件は担当が違うのでこちらにかけ直してください」と何度もたらい回しにされると、お客様の怒りは倍増します。自分が窓口になって、社内で確認してから回答するのが正しい対応です。
NG4:曖昧な約束をする
- NG:「なるべく早く対応します」→ いつまでかわからない
- OK:「○営業日以内にご連絡いたします」→ 具体的な期限がある
クレーム対応の最大の敵は「曖昧さ」。いつまでに、誰が、何をするのかを明確に伝えることが、お客様の安心につながる。
クレームのタイプ別対処法
クレームには大きく分けて4つのタイプがあり、それぞれ適切な対処法が異なります。
タイプ1:正当なクレーム(改善要望)
商品やサービスに実際の問題があるケースです。最も多いタイプで、真摯に対応すれば顧客のロイヤリティ向上につながります。
対処法:誠実に謝罪し、具体的な改善策を提示する。
タイプ2:期待値のギャップ
商品やサービスに問題はないが、お客様の期待と実際にギャップがあるケースです。
対処法:お客様の期待を丁寧に聴き、できることとできないことを明確に説明する。
タイプ3:感情的なクレーム
問題の大小に関わらず、お客様が感情的になっているケースです。このタイプでは、問題解決よりも先に感情のケアが必要です。
- まず感情を受け止める:「ご不快な思いをされたのですね。大変申し訳ございません」
- 共感を示す:「お気持ちはよく理解できます」
- 十分に話を聴く:相手の感情が落ち着くまで聴き続ける
- 感情が落ち着いてから解決策を提示する:怒りの最中に解決策を出しても受け入れられない
臨床心理学の知見では、人は感情を十分に表現し受け止めてもらうことで、自然と冷静さを取り戻します。焦って解決策に移らず、まず「聴く」ことに集中しましょう。
タイプ4:悪意のあるクレーム(不当要求)
金品の要求や脅迫など、明らかに不当な要求をするケースです。このタイプには毅然とした対応が必要です。
- 1人で対応せず、上司や責任者に速やかに報告する
- 会話の記録を残す(メモ・録音)
- できないことは「できません」と明確に伝える
- 必要に応じて法的対応を検討する
| クレームタイプ | 対応の重点 | ゴール |
|---|---|---|
| 正当なクレーム | 迅速な問題解決 | 信頼回復・ファン化 |
| 期待値ギャップ | 丁寧な説明 | 認識の一致・理解促進 |
| 感情的クレーム | 傾聴・共感 | 感情の沈静化 |
| 不当要求 | 毅然とした対応 | エスカレーション・記録保全 |
メール・チャットでのクレーム対応
テキストでのクレーム対応は、電話や対面よりも誤解が生じやすいため、より慎重な言葉選びが求められます。
メール対応の基本構成
件名:○○の件につきまして【お詫びとご報告】
○○様
いつもご利用いただき、誠にありがとうございます。
株式会社△△の□□でございます。
このたびは、○○の件でご不便をおかけし、大変申し訳ございません。
お客様にご迷惑をおかけしましたことを、心よりお詫び申し上げます。
ご指摘いただいた内容について社内で確認いたしましたところ、△△が原因であることが判明いたしました。
つきましては、以下の通り対応させていただきたく存じます。
・□□の対応(具体的な内容)
・○○日までに完了予定
今後このようなことがないよう、再発防止に努めてまいります。
重ねてお詫び申し上げますとともに、今後とも変わらぬお引き立てを賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
テキスト対応で注意すべき点
- 返信は24時間以内:すぐに解決策が出せなくても、受付の一次返信は当日中に送る
- 感情を読み取る:テキストでは感情が伝わりにくいため、相手の怒りの度合いを慎重に判断する
- 定型文だけに頼らない:コピペ感のある返信はお客様の不信感を増大させる
- 読み返してから送信:冷たい印象を与えていないか、誤解を招く表現がないか確認する
クレーム対応は、問題を解決して終わりではありません。対応後にフォローアップの連絡をすることで、顧客満足度はさらに向上します。「先日の件、その後いかがでしょうか」という一言が、お客様の信頼を大きく高めます。アメリカの顧客サービスの研究では、フォローアップを行った場合、顧客の再購入率が最大95%まで上昇するというデータもあります。
まとめ:クレーム対応力は最高のビジネススキル
クレーム対応は、多くの人にとってストレスの大きい仕事です。しかし、正しい「型」を身につけて実践すれば、クレームをお客様との信頼関係を深めるチャンスに変えることができます。
今日から実践できるアクションプランをまとめます。
- 今日:基本5ステップ(謝罪→傾聴→確認→解決→感謝)を暗記する
- 明日から:クレーム対応フレーズ集をデスクに貼る
- 次のクレーム対応時:5ステップを意識して対応する
- 対応後:対応内容を振り返り、改善点を記録する
- 1ヶ月後:クレーム対応の事例を蓄積し、チームで共有する
クレームに正面から向き合える人は、どんな組織でも必要とされる。「お客様の怒りを、信頼に変える力」は、一生使えるビジネススキルである。
クレーム対応を含む職場コミュニケーションの様々なお悩みは、お悩み解決一覧で紹介しています。ぜひ他のケースも参考にしてください。