🛠️ 情シス実務 第3章-2節

TCOの考え方

TCOの考え方 ― 「安い買い物」が実は高くつく理由

「A社のサーバーは100万円、B社は150万円だからA社にしよう」――この判断、本当に正しいでしょうか? IT機器やサービスの費用は、購入価格だけで判断すると痛い目に遭います。TCO(Total Cost of Ownership=総所有コスト)の考え方を身につけましょう。

TCOとは何か

TCOとは、ある機器やシステムを導入してから廃棄するまでにかかる費用の総額です。購入費用はTCOの一部にすぎません。

TCOは大きく3つのフェーズに分けられます。

  1. 導入コスト ― 購入費、構築費、データ移行費、教育費
  2. 運用コスト ― 保守費、ライセンス更新費、電気代、管理工数
  3. 廃棄コスト ― データ消去費、機器廃棄費、移行先への移行費

隠れコストを見逃さない

TCOの計算で見落としがちな「隠れコスト」は以下のとおりです。

隠れコスト内容見落とす理由
管理工数自分がその機器の管理に費やす時間人件費として認識されにくい
ダウンタイム障害時の業務停止による損失直接的な支出ではないため
学習コスト新システム習得にかかる社員の時間教育費として計上されない
バージョンアップ数年後に必要となるアップグレード費用導入時は考慮しないことが多い
連携コスト他システムとの連携開発・カスタマイズ費用導入後に発覚することが多い

ライフサイクルコストで考える

IT機器には「寿命」があります。適切なライフサイクルを設定し、計画的にリプレース(入れ替え)するのがTCO最適化の基本です。

機器推奨ライフサイクル理由
業務用PC4〜5年性能低下、バッテリー劣化、保証切れ
サーバー5〜7年ハードウェア保守終了、性能不足
ネットワーク機器5〜7年ファームウェアサポート終了、規格対応
複合機5年(リース契約に準拠)リース満了、消耗部品の限界
UPS(無停電電源装置)バッテリー3〜5年、本体7〜10年バッテリー劣化による保護能力低下

クラウド vs オンプレミスのTCO比較

よく聞かれる「クラウドとオンプレミス、どちらが安いか」問題。答えは「場合による」ですが、比較の考え方を押さえておきましょう。

  • オンプレミスが有利なケース ― 大量のデータを長期保存する場合、常時高負荷で稼働する場合、5年以上使い続ける場合
  • クラウドが有利なケース ― 利用量が変動する場合、初期投資を抑えたい場合、運用管理の人的リソースがない場合

ひとり情シスの場合、運用管理の工数削減という観点でクラウドのメリットが大きいことが多いです。サーバーのハードウェア障害対応から解放されるだけでも、大きな価値があります。

TCOを意識した提案ができると、経営層からの信頼度は格段に上がります。「安いものを買う」のではなく「トータルで最適なものを選ぶ」という視点を持ちましょう。