グリットとは何か ― ダックワースの研究
グリットとは何か ― ダックワースの研究
なぜ同じレベルの才能を持つ人の間で、成功する人としない人がいるのでしょうか。この問いに正面から挑んだのが、ペンシルベニア大学の心理学者アンジェラ・ダックワース博士です。彼女の答えは明快でした。才能ではなく「グリット(Grit)」が成功を分ける、と。
グリットの定義
グリットとは「長期的な目標に対する情熱と粘り強さ(Passion and Perseverance for long-term goals)」と定義されます。ここで重要なのは、グリットが単なる「根性」や「我慢強さ」ではないという点です。グリットは2つの要素で構成されています。
- 情熱の一貫性(Consistency of Interests):特定の目標に対する長期的な興味と関心の持続
- 努力の粘り強さ(Perseverance of Effort):困難や挫折に直面しても努力を継続する力
つまり、グリットとは「歯を食いしばって耐える」ことではなく、「自分にとって重要な目標に、長期間にわたって情熱を持ち続けながら取り組む」ことなのです。
才能×努力=スキル。スキル×努力=達成。努力は二度効く。 ― アンジェラ・ダックワース『GRIT やり抜く力』
ダックワースの研究成果
ダックワース博士は、さまざまな分野でグリットと成功の関係を調査しました。その結果は驚くべきものでした。
- ウェストポイント(米陸軍士官学校):入学後の過酷な初期訓練「ビーストバラックス」を耐え抜くかどうかを最もよく予測したのは、体力テストの成績でも学業成績でもなく、グリットスコアでした。
- 全米スペリング大会:最終ラウンドに残る子どもを予測する最大の要因は、IQではなくグリットでした。グリットの高い子どもは、より多くの時間を「意図的な練習」に費やしていました。
- 新人教師の離職率:グリットの高い教師は、最初の1年の困難な時期を乗り越え、継続して教壇に立つ確率が高く、生徒の学業成績を向上させる効果も大きかったのです。
- シカゴの公立学校:グリットの高い生徒は、そうでない生徒と比べて卒業率が有意に高いことがわかりました。
グリットと才能の関係
興味深いことに、ダックワースの研究は「才能とグリットは逆相関する」傾向を示しています。つまり、天賦の才能に恵まれた人は、努力の必要性を感じにくいため、かえってグリットが育ちにくい場合があるのです。
これは「才能の罠」とも呼べる現象です。私たちは「才能のある人が成功する」と直感的に考えがちですが、実際には才能だけでは不十分です。ダックワース博士の方程式が示すように、努力は二度カウントされます。スキルの獲得にも、スキルの発揮にも、努力が必要なのです。
グリットスケール ― 自己評価
以下の質問に1(全く当てはまらない)〜5(非常に当てはまる)で回答してみてください。
| 質問 | 評価 |
|---|---|
| 新しいアイデアやプロジェクトに注意を奪われて、以前から取り組んでいることがおろそかになることがある(逆転項目) | 1-5 |
| 挫折があっても、くじけない。簡単にはあきらめない | 1-5 |
| 数ヶ月以上かかる目標を設定し、それに向かって取り組み続けることができる | 1-5 |
| 努力家だ | 1-5 |
| 一度始めたことは最後までやり遂げる | 1-5 |
合計スコアが高いほどグリットが高いことを示しますが、これはあくまで現時点でのスナップショットです。グリットは固定的な特性ではなく、意識的に育てることができます。次のレッスンでは、情熱と粘り強さの具体的な育て方を学びます。