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PERMAモデルの理解と職場への応用

PERMAモデルを深く理解する

前回のレッスンで概要を学んだPERMAモデル。このレッスンでは、5つの要素それぞれを深掘りし、職場でどのように実践できるかを具体的に考えていきます。

セリグマンは、これら5つの要素が「ウェルビーイングの構成要素」であり、それぞれが独立して測定可能で、人々がそれ自体のために追求するものだと定義しています。つまり、ポジティブ感情を高めるために人間関係を利用するのではなく、良好な人間関係それ自体が目的になり得るということです。

P:ポジティブ感情(Positive Emotion)

ポジティブ感情とは、喜び、感謝、安心、興味、希望、誇り、楽しさ、畏敬、愛情など、心地よい感情の総称です。バーバラ・フレドリクソンの研究によれば、ポジティブ感情は単に「気分が良い」だけでなく、思考の幅を広げ、行動の選択肢を増やす機能を持ちます。

職場での実践

  • 朝礼で「良いニュース」を共有する時間を設ける:チーム全体のポジティブ感情を高めるシンプルな方法です
  • プロジェクトの振り返りで成功体験を先に語る:反省点だけでなく「何がうまくいったか」から始めることで安心感が生まれます
  • 感謝メールの習慣化:週に一度、同僚への感謝を伝えるメールを書くことでチームの雰囲気が変わります
  • オフィス環境の改善:自然光、植物、快適な空間がポジティブ感情を促進することが研究で示されています

E:エンゲージメント(Engagement)

エンゲージメントは、活動に完全に没頭し、時間を忘れるような状態を指します。ミハイ・チクセントミハイが提唱した「フロー」の概念と深く結びついています。フロー状態にあるとき、人は最高のパフォーマンスを発揮します。

職場での実践

  • 強みを活かせる業務のアサイン:各メンバーが得意とする分野に集中できる体制を整えましょう
  • 適切な難易度の設定:簡単すぎず難しすぎない、ストレッチゾーンの目標設定が鍵です
  • 集中タイムの確保:会議のない集中時間帯をチームで決め、深い仕事に没頭できる環境を作ります
  • 自律性の付与:方法を自分で選べる裁量を持たせることでエンゲージメントが大幅に高まります

R:人間関係(Relationships)

人間は社会的な生き物であり、良好な人間関係はウェルビーイングの根幹です。ハーバード大学が85年以上続けている成人発達研究では、人生の幸福度を最も強く予測するのは「温かい人間関係の質」であることが明らかになっています。

職場での実践

  • 1on1ミーティングの定期実施:上司と部下の信頼関係を築く時間を確保します
  • 心理的安全性の構築:エイミー・エドモンドソンが提唱した、失敗を恐れず発言できる環境を目指しましょう
  • チームビルディング活動:業務外のコミュニケーション機会を意識的に創出します
  • アクティブ・リスニングの実践:相手の話に真剣に耳を傾ける姿勢が信頼の基盤になります

M:意味(Meaning)

自分よりも大きな何かに貢献しているという感覚、それが意味です。仕事においては、「なぜこの仕事をしているのか」「社会にどのような価値を提供しているのか」という問いに対する答えが、この要素に当たります。

職場での実践

  • 企業のミッション・ビジョンの浸透:日々の業務と組織の大きな目的のつながりを明確にします
  • 顧客の声のフィードバック:自分の仕事が誰の役に立っているかを実感する機会を設けます
  • 社会貢献活動への参加:CSR活動を通じて仕事の意味を広げることができます
  • キャリアストーリーの共有:なぜこの仕事を選んだのかをチームで語り合うことで意味の再発見につながります

A:達成(Achievement)

達成とは、目標に向かって努力し、それを成し遂げる経験です。重要なのは、結果だけでなくプロセスにおける成長実感も含まれるという点です。アンジェラ・ダックワースの「グリット(やり抜く力)」の研究は、才能よりも粘り強さが長期的な達成を予測することを示しています。

職場での実践

  • スモールウィンの設計:大きな目標を小さなマイルストーンに分解し、達成感を頻繁に味わえるようにします
  • 進捗の可視化:ダッシュボードやカンバンで達成度を見える化することでモチベーションが持続します
  • 成功の祝福:目標達成時にチームで祝う文化をつくり、達成の喜びを共有します
  • 成長フィードバック:結果だけでなくプロセスや成長に焦点を当てた評価を行います

PERMAの相乗効果

PERMAの5要素は独立していますが、互いに影響し合い、相乗効果を生み出します。たとえば、良好な人間関係(R)はポジティブ感情(P)を高め、仕事の意味(M)を見出すことでエンゲージメント(E)が向上し、それが達成(A)につながるという好循環が生まれます。

「組織のウェルビーイングは、5つの要素の総和ではなく、掛け算である。一つの要素を高めることが、他の要素にも波及する好循環を生む」

自分の職場のPERMAを診断する

まず、自分自身のPERMAスコアを主観的に評価してみましょう。各要素を10点満点で採点し、最も低い要素から改善に着手するのが効果的です。また、チーム全体でこの診断を行えば、組織としての強みと課題が見えてきます。

要素自己評価の問い
P仕事中にポジティブな感情をどのくらい感じているか?
E仕事に没頭し、時間を忘れる瞬間がどのくらいあるか?
R職場の人間関係にどのくらい満足しているか?
M自分の仕事にどのくらい意味を感じているか?
A目標に向かって進んでいる実感がどのくらいあるか?

PERMAモデルは、組織のウェルビーイングを体系的に向上させるための羅針盤です。次のレッスンからは、各要素をさらに深く掘り下げ、具体的な実践法を学んでいきます。