幸福の5つの柱 ― PERMAモデル
PERMAモデルとは
前のレッスンで紹介したマーティン・セリグマン博士は、長年の研究を通じて「持続的な幸福」を構成する5つの要素を特定しました。その頭文字を取ってPERMAモデルと呼ばれています。
PERMAモデルは、2011年に出版された著書『Flourish(フラリッシュ)』で体系化されました。「幸せ」という漠然とした概念を、具体的な5つの柱に分解することで、日常生活の中で何を意識すればよいかが明確になります。
| 要素 | 英語 | 意味 | 日常の例 |
|---|---|---|---|
| P | Positive Emotion | ポジティブ感情 | 美味しい食事で喜びを感じる |
| E | Engagement | 没頭・エンゲージメント | 趣味の手芸に夢中になる |
| R | Relationships | 人間関係 | 友人とのおしゃべりを楽しむ |
| M | Meaning | 意味・意義 | ボランティア活動にやりがいを感じる |
| A | Achievement | 達成感 | 料理の新レシピが成功する |
P ― ポジティブ感情(Positive Emotion)
ポジティブ感情とは、喜び、感謝、安心、楽しさ、愛情、希望といった心地よい感情のことです。バーバラ・フレドリクソン博士の研究によると、ポジティブ感情は思考の幅を広げ、新しい行動を生み出す力があります(拡張-形成理論)。
日常での育て方
- 朝、窓を開けて新鮮な空気を吸い、「気持ちいい」と感じる
- 好きな音楽を聴きながら家事をする
- ペットと遊ぶ、植物の成長を観察する
- 美味しいお茶やコーヒーをゆっくり味わう
E ― 没頭・エンゲージメント(Engagement)
エンゲージメントとは、活動に完全に没頭している状態です。心理学者チクセントミハイが提唱した「フロー」の概念に近いものです。フロー状態では時間の感覚を忘れるほど集中し、深い満足感を得られます。
日常での育て方
- パズル、クロスワード、将棋などの知的な遊び
- ガーデニング、料理、DIYなどの手作業
- 楽器の演奏、絵を描くなどの創作活動
- スポーツやウォーキングへの集中
R ― 人間関係(Relationships)
人間は社会的な生き物であり、良好な人間関係は幸福の最も強い予測因子の一つです。ハーバード大学が85年以上にわたって行っている「成人発達研究」でも、人間関係の質が健康と幸福に最も大きな影響を与えることが示されています。
日常での育て方
- 家族との食事の時間を大切にする
- 友人に「最近どう?」と連絡を取る
- 地域の活動やサークルに参加する
- 相手の話に耳を傾け、共感を示す
M ― 意味・意義(Meaning)
自分より大きな何かに所属し、貢献していると感じることで、人生に意味を見出せます。「意味」は必ずしも壮大なものである必要はありません。家族のために料理を作ること、近所の清掃に参加すること、孫に昔の遊びを教えることも立派な「意味ある行動」です。
日常での育て方
- 家族の健康を支える食事づくり
- 地域のボランティアや見守り活動
- 自分の経験や知恵を次の世代に伝える
- 自分の価値観に沿った生活を意識する
A ― 達成感(Achievement)
何かを成し遂げたという感覚は、大きな満足感につながります。大切なのは、他人との比較ではなく、自分なりの目標を設定し、達成することです。
日常での育て方
- 新しいレシピに挑戦して完成させる
- 毎日の散歩の歩数目標を達成する
- 読みたかった本を一冊読み終える
- 部屋の片づけや整理整頓を完了する
PERMAのバランスを整える
5つの要素すべてを完璧にする必要はありません。大切なのはバランスです。今の自分の生活を振り返り、どの要素が足りていないかを考えてみましょう。
「幸福とは一つの感情ではなく、複数の要素が組み合わさった状態である。PERMAのどれか一つでも意識的に高めることで、全体の幸福感は向上する」――マーティン・セリグマン
次のレッスンからは、PERMAの各要素をさらに深く掘り下げ、日常生活ですぐに実践できる具体的な方法を学んでいきます。まずは「感謝」の力から始めましょう。